2019年7月21日日曜日

横津岳 烏帽子岳 袴腰岳 (湿原)


横津岳1167mから烏帽子岳(1078m)そして袴腰岳1108.4mを歩きました。
横津岳~烏帽子岳間の道のりは2.9kmです。地形はほぼ1000m台の溶岩台地です。

溶岩台地には、道なりに①横津岳雲井沼湿原(1130m)、②横津岳前沼湿原(第一湿原.1080m)、③横津岳烏帽子沼湿原(第二湿原.1040m)の三つの湿原があります。

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! ①は中間湿原、②と③は高層湿原。標高1000m付近に成立しています。

! 袴腰岳南東(方位122°.距離2200m)にアヤメ湿原(標高750mの中間湿原)があります。

! ②と③の湿原の暖かさの指数(WI)は、大野町及び旧南茅部町の気象観測資料から気温逓減率5.5℃を用いて推定すると、ほぼ25~31 m.d. の間になります。

! 日本の森林帯の亜高山帯のWIが15~45 m.d.とされています。

! 函館付近の亜高山帯の標高は、気温の逓減率を用いて当てはめれば、標高650m~標高1500m付近がそれに相当します。

! これによると、横津溶岩台地上の①、②、③の湿原は、亜高山帯の真ん中にあることになります。

! 北海道に山地湿原は40ヵ所以上記録されています。

! 横津岳の湿原を離れて次の山地湿原は、横津岳から200㎞ほど北上した標高800m付近に分布しているニセコ山系のパンケメクニナイ・神仙沼・鏡沼、喜茂別だけ東方の中山、ぺーぺナイ川源流の京極…等の湿原になります。

! ①と②は高層湿原と呼ばれる中でも、広がりのあるブルデが配置された、かなり堆積が進んだ高層湿原とされています。

! 規模こそ小さいが、高層湿原の植生においても相観においてもしっかり備わっている湿原です。市街地から身近にありながら、湿原を実際に学びことにおいても貴重な湿原といえます。

! 自説:横津岳溶岩台地の鞍部に黄砂(風成塵)が永い時間をかけて堆積した。 →黄砂が沼底に不透水層を形成していった。 →貧栄養の降水によって沼が発達するようになった。 →オホーツク高気圧の影響を受けた濃霧が山域を覆いやすい環境にあって低温傾向をもたらし、より植物遺体は腐朽し難い環境へ。 →腐朽し難い植物が沼を埋め続けた。 →堆積した植物遺体から出た腐植酸がさらに貧栄養の環境を招いた。 →高層湿原への発達をさらに進めた。…と考えられます。

! 今日も恵山方面からの津軽海峡に入った霧雲が、函館平野へ伸びていました。横津岳台地は、晴れていたが涼しい風がありました。 

! ミズゴケ湿原を踏み込みにより失うと、その回復に気の遠くなるほど時間が必要なことが知られています。来訪する者らはそのことを知ってか、内部に立ち入ることなく、そこから離れて眺めるようにして湿原が観察されている様子が継続しているように見えました。

! 上記のニセコ山塊のように針葉樹が伴わないわけは、数千年前のヒプシサーマル期で説明できるようです。

! 花粉分析から函館付近の過去の植生の遷移が明らかにされたり、読み解けば過去の記録がある湿原堆積物(泥炭)は、地域で失いたくない貴重な湿原にもなっています。

◆ 雑感:湿原のゼンテイカの茎がエゾシカに食べられていました。
数年前に気が付いたことですが、食害の痕は蕾ごとその下部から、剪定ばさみで切断されたような痕跡でした。
 ゼンテイカは開花年とそうでない年と年差が大きい種です。
しかし食害を確認したその年以降は、ゼンテイカが湿原いっぱいを彩ることは皆無でした。
 横津高原の植物の開花に見どころはいくつかあります。ゼンテイカの黄色ととワタスゲの白色が湿原いっぱいに広がっているのはやはり圧巻です。

 それが近年失われた景観でやはり残念なことです。ゼンテイカにとっては、翌年度用へ根茎にエネルギーを蓄積できるのは最良であろうか・・・つづく未完


......↓(参照北海道南部横津岳山塊の湿原植生:2013.3:北海道渡島振興局東部森林室.............
①雲井沼(50m×15m程度)の水面にフトヒルムシロ群落、シュレンケにヤチスゲ群落・
池畔にアオモリミズゴケ群落、わずかに小高いローンにイボミズゴケ群落、ササ生地に隣接してゼンテイカ群落。

②前沼湿原:シュレンケにヤチスゲ群落、ローンにイボミズゴケ群落&キダチミズゴケ群落、ブルデにスギバミズゴケ群落、ササ生地に接してゼンテイカ群落。

③烏帽子岳湿原:池塘にフトヒルムシロ群落、池の畔にヤチスゲ群落、ローンにイボミズゴケ-ムラサキミズゴケ群落、平坦なローンにタチギボウシ-スギバミズゴケ群落、ブルデにエゾイソツツジが混じるガンコウラン-スギバミズゴケ群落、ササ生地に接してゼンテイカ群落。
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