2013年9月7日土曜日

横津岳(春の大滝)

「春の大滝」は旧横津岳国際スキー場へ向かう道路(780m付近)から、雪融け時期に華厳の滝風の豪快な滝が見られ、大川の沢にこのような大滝はあったか(?)と、始めて見た者は驚かされる。

横津岳登山道路に沿って流れる大川は、横津岳・雲井沼・横津岳気象レーダーを源流として、JRおおなかやま駅付近に流れ豊田で久根別川に合流している。


雪融け時期を過ぎると、この滝に気付く人はまずいないだろう。人呼んで横津の幻の「春の大滝」。どれだけ大きな滝なのか・・・。研究熱心なSYO氏の誘われ、大川上流の「幻の滝」の正体を見届けに出かけた。

旧函館よこつゴルフ場跡北東端(横津道路沿いの立入禁止のゲート)から、往時の研修施設に向かう舗装道路を下って大川に入渓(550m)した。

三つの大きな治山ダムを越え、遡行中は急流・大石が続いて、オーバーであるけれど、どこも滝の流れのような急流を行くようなものであった。いくつかの滝を越え、10mの滝はロープを出し、流れ盤のオーバーハングの滝は右岸を大高巻きして滝の上に立った。

標高815m付近で行動中止とした。右側(南東側)に比高15m程の斜面のブナ林越しに、手の届きそうなスカイラインが見えた。そこは市街地の高速道路まで下る幅の広大な通称バカツネ尾根だった。

チョット上流を覗いた。ササや灌木に覆われた緩やかな渓床が見えた。ブナ林にダケカンバが混じる林が覆っていた。春の大滝の上に出ていたのだった。沢歩きはここで終わりにした。

春の大滝の正体を見た。上部のバカツネ尾根上部の溶岩台地220haにものぼる広大な雪融け水を集めて流れ落ちていたので、融雪季が目立つ水流になっていた。そして、春の大滝は横津道路から真正面に見ていたので、急な一本の滝に見えていたのであった。

↓ 『ウォッちず』6000 赤フラックは最終到達地点標高815m
春の幻の大滝







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入渓後ほどなく三つの治山ダムに出会う。
大石は、「私は自然になりたい画家犬塚勉」の「暗く深き渓谷の入り口」に見えた。印象に残った渓谷だった。
<「自然」の前に平伏すように生活を律し、「自然と一体化した農的な暮らしの中から生まれる作品を」と願った犬塚に見えていたものは何であったのか、新たな課題を持ち絵に向き合いたいと考えるようになりました…略・・・2012 年 5 月 28日; 犬塚 陽子>

治山ダムを過ぎると左に小さな沢が流れていた。奥に開けた空間が広がっているように見えた。往時のスキー場の斜面であり、第3スキーリフトに通じている小沢に違いない。谷壁はブナの小林に覆われていた。おそらく工事屋さんが行き来した小沢であろうか。

大川の本流に沿う地質は、標高120mから火山砕屑岩類、同720mから横津岳下部溶岩、同1000mから山頂まで横津岳上部溶岩の層準になってそれぞれを覆っている。大転石の下の河床や谷壁に左図のような色合いの凝灰角礫岩、凝灰岩、集塊岩が現れていた。

いくつかの小滝があるが、前述のような岩はフリクションが効いて心地よく前進できた。
750m付近の10m滝。板状節理の溶岩が順層になって滝頭にのっかっていた。
横津岳下部溶岩域であろうか?順層そしてオーバーハングの板状輝石安山岩の滝頭を、体をくねらせながら滝上に立ったトップのSHOさん。
最後の滝(800m)だが、下部溶岩を覆う上部溶岩がオーバーハングそして順層になっていて、上に進める弱点が見つからない。ロープをたたんで、右岸のブナ林を高巻きした。
最後の滝を高巻きして渓床に立てた。そこは手の届くような場所にスカイラインが見えた。通称バカツネ尾根(溶岩台地)に届いた。渓流は緩やかになった。溶岩台地をうねる小さな沢が続くのであろう。滝のある渓流はほぼここで終わり、前進中止とした。

ブナ林にダケカンバガ混じる。サワグルミが沢沿いに立派に生立している。チシマザサが茂る。そんな植生が広がっていた。