2011年6月26日日曜日

烏帽子岳(ゼンテイカ晩霜害)

横津台地では遅霜の被害が目立っていた。草本も木本も・・・ミネヤナギは黒ずみコガネギクは淡褐色。気象庁の日ごとの値(函館6月26日)は下表のとおりであった。
気圧:1014hPa最低:9.3℃、北斗市は8.2℃最高:20.3℃
(⇒最低気温を記録した04時20分の天気・快晴、雲量・0、視程・20km)。横津台地の早朝の気温を気象観測所から推定すると3.8℃~2.9℃であった(気温逓減率0.55℃/100m)。
ゼンテイカの霜害の姿は初めて見た。ヘアーピンのように垂れ下がった花柄・蕾ははたして立ち上がるか?再訪する機会に確かめたい。

晩霜害でゼンテイカの花柄がヘアーピンのように下垂していた


同上の部分図:晩霜害で花茎が下垂する個体はかなりの量だった
はたして立ち直るか?

2011年6月25日土曜日

黒松内岳ブナ滝沢285右股

Sho・Hanと3人で黒松内岳ブナ滝沢285右股を登った。6月11日のブナ滝沢285右股の残雪は、350mから上が埋まっていたけれど、今日は残雪は全くなし。

入渓地点から連続的に表れる滝の岩相

Co350m付近から沢身は頁岩っぽくなる。しかし左右の谷壁は依然として
上図の岩相が頁岩の上を覆っているようだ

Co600mから上は安山岩質の溶岩が海水中で急冷した様子の
岩相(手掛かり足掛かりの良い岩だった)

2011年6月22日水曜日

赤岩(4段テラス・東チムニー岩)

先月に続いて、250km先の赤岩に日帰りで遊んだ。報道写真に写りのいい4段テラス、赤岩でも少ないというチムニーがある東チムニー岩をフィールドにした。この度も赤岩の著書のあるNumaza氏の教えをいただいた。

チムニー岩直下にいたエゾノソナレギク(別名イワギク・ピレオギク):海岸岩
角地に生きる植物だ。葉の切れ込み方や葉の厚みなどがいろいろと変化が
見られるという。この種は日本海側に点々と生きているようだけれど、なじみ
のコハマギクは太平洋側に大群落をつくって比較的多くみられる種類だ。


東チムニー岩Ⅰルート:チムニーの中に入り込むと抜け出
せなくなる、チムニーの外に出すぎると背中を使いにくく
なる。その兼ね合いとムーブメントが習熟のポイントだ。


東チムニー岩Ⅱルート:ルートⅠの背側:上部の岩窟に入ら
ないようにして右の壁にひょいと写るのがコツのようだ。


東チムニー岩岩頭:ミヤマウシノケグサ、黄色はエゾスカシユリ


真中の岩塔4段テラスを登攀した。左が猫岩


4段テラスを詰める

2011年6月19日日曜日

松倉沢(ミズノ沢~黒滝~アヤメヤチ)

松倉川のミズノ沢出合いから入渓した。455二股で左俣(通称黒滝)に入ってアヤメ谷地を目指した。左俣に入ると、安山岩質溶岩の岩相から一転明るい凝灰岩質の沢身になった。

凝灰岩の中に抱かれるように、円形のシルト~泥質の頁岩が顔を出して
いる



上図の拡大図

2011年6月11日土曜日

黒松内川重滝沢320左股(ヒメヤシャブシ)

黒松内岳740.0mへの沢登りルートはブナ滝沢285左俣・同右股・同重滝沢320右股・同左俣の4ルート紹介されている(北海道の沢登り・独断ガイドブック)。寿都郡黒松内村パンケクロマツナイ(通称ガロ川)ノ瀧ノ景<明治末(?)> がブナ沢の国道側にある沢の中にある。現地形図では「ガロー越沢」と記載されている。明治時代末の写真を見ると、地質図からも、このような滝が連続して出てくるのではないかと思われる。そんなわけで前記4ルートの沢遡行に、そんなにそん色ない沢登りができるのではないだろうか・・・期待されるガロー越沢だ。

*1 「ガロ川火山岩類」=輝石安山岩質水冷破砕岩(ハイアロクラスタイト)・枕状溶岩および火山円礫岩と発達した岩脈。・【日本の地質1.北海道地方】P88:日本の地質『北海道地方』編集委員会編:共立出版KK.1990年によると=「ガロ川火山岩類」は、久保ほか(1983)命名.模式地は黒松内町の賀老川.模式地と長万部町西方に分布.(長尾巧・佐々(1933a)に相当.主に安山岩質の溶岩・火山岩からなり、基底礫岩をともなう.安山岩溶岩のK-Ar年代で4.37~4.47Ma(久保ほか、1988).黒松内層を不整合に覆う.層厚500m以上.
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*2 模式地の黒松内町の賀老川には、写真「寿都郡黒松内村パンケクロマツナイ(通称ガロ川)ノ瀧ノ景(成立年 明治末(?))」…北方資料データベースより< http://www.lib.hokudai.ac.jp/cgi-bin/hoppodb/record.cgi?id=0B013680000000000 >のようにいい滝相があるようだ.この沢から黒松内岳への遡行も興味深い.*一昨年遡行した黒松内岳ブナの沢の左股:輝石安山岩質水冷破砕岩(ハイアロクラスタイト)が5mの滝となって現われていた.
* (註:パンケクロマツナイとは、現在の賀老川のこと.データベースアイヌ語地名(北海道出版企画センター)によると、パンケクルマツナイ(ルとツは小さい標記)は、松浦武四郎の図ではクロマトナイ(黒松内川)の一番下流側の支流ということでハンケクロマトナイという名前になっている.現在の滝の写真は、賀老川分岐から500m上流にある.(註はブナセンター 学芸員 斎藤均より)

* ハンケクロマトナイ
=寿都郡黒松内村パンケクロマツナイ(通称ガロ川)
=ガロー越沢
=と考えられるから、久保ほか命名の「ガロ川火山岩類」模式地の黒松内町の賀老川、に違いない。

2011年6月5日日曜日

袴腰岳(チシマザクラ)

昨秋写万部岳で会ったKas氏と、チシマザクラの開花時期に横津高原を歩くことになっていた。予定の期日に黒松内Kas、洞爺湖Wat、北斗Oot、函館An・Moの全5名が、チシマザクラロード経由で袴腰岳を目指した。例年よりかなり生物季節が遅れていたので、開花は期待外れであった。昨日の恵山火口原にヤマツツジの赤は認められず、作物の生育情報も数日遅れている報道もあって、5月から6月上旬の季節の遅れは道南の全般的傾向であった。
北斗のOot氏は横津高原のチシマザクラとミネザクラの個体を繰り返し調べていたという。一時その形態の違い、分け方、チシマザクラとミネザクラはどこが違う?・・・が話題になった。横津高原(溶岩台地)では ① 同所的に両種が生育している  ②花柄・葉柄の毛の・有(その多少)~無が連続的である。 このことから はたして如何にして母種ミネザクラ、変種チシマザクラを分けるのであろうか? 
・母種ミネザクラPrunus nipponica Matsumura
・変種チシマザクラPrunus nipponica Matsumura var. kurilensis (Miyabe) Wils.
両種の見方に示唆を得ることができる報告(下表参照)<”チシマザクラとミネザクラはどこが違う?:道立林試2007きたみどり”>がある。これによると<花柄や葉柄に毛のないものはミネザクラ、多いものはチシマザクラといえますが、このような結果からは両者の間に明確なラインを引くことは難しいといえます。>として、<緑化樹として扱う場合は一般に親しまれている「チシマザクラ」に統一しても構わないと考えています。>と結論づけている。

 
        
 
根室産チシマザクラ実生苗の毛の有無
 
 
個体数
葉柄
 
 
161
 
 花柄
19%2%0%0%22% 
 
9%15%5%0%29% 
 
11%4%9%3%27% 
 
5%2%4%11%22% 
 
44%24%19%14%100% 
 
原図<チシマザクラとミネザクラはどこが違う?:道立林試2007きたみどり>を改変
 
 
        

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袴腰岳山頂のミヤマハンノキ開花の様子
赤い穂状花序は♀、太くぶら下がる穂状花序は♂

同所のダケカンバ♂花穂

同株ダケカンバの♀穂状花序

ミネヤナギの♂花穂(♂株)


ダケカンバ林の解舒:背景に黒い樹幹のブナ

ダケカンバ樹冠下のチシマザクラ群:開花遅れて
背景に烏帽子岳直下の雪崩斜面の残雪(夏道を覆う)


5月15日の同所では、雪解け直後で、開花直前だった
開花受粉を終えて結実期の入る
白色に賑わう果穂は今年おおいに楽しめそうだ

日本庭園(Co980の定点撮影)

袴腰岳山頂の定点撮影

2011年6月4日土曜日

恵山(ヒメコマツ)

渡島半島の太平洋側におけるヒメコマツの分布は、落部のヤセ尾根に高密度で自生し、渡島・胆振地方の北限にもなっている。日本海側は、点々と北上する情報があっても、北限にあたる旧大成町宮野峠から西方にかなり歩かなければならないから、残念ながら未だ訪ねることはしていない。何れ猛者連と連れだって達成したいと思っている。

北海道におけるヒメコマツの地理的分布は、北限とされる十勝の自生地が東大雪博物館研究報告「ピシカチナイ山の1尾根における北限のキタゴヨウ林分の現況について」(14):1-14 1992/3/に詳しい。また、天然記念物に指定された ・鶉川と・幌満 はよく知られているところである。旧南茅部町の町の木が「キタゴヨウ」に指定されているが、その理由も知りたい。

恵山への登山ルートは①恵山 ②恵山岬 ③八幡川の三か所が整備されている。この度は長いルートとされる八幡川から外輪山~恵山の頂に立ったが、「外輪山の外斜面を見ずして恵山は語らず」の感を強くしたのはヒメコマツの林をそこここに見たからであった。植林地やミズナラを主とした雑木林、ミズナラ・サラサドウダン群落、サラサドウダン林と続く林を登山路に沿って進むと、ほどなく標高点461mへの西北西尾根に立つことになる。この尾根から八幡川源流域が一気に目に入ってくる。源流部の地形図の崖記号のあるところはことごとくヒメコマツの林があった。急斜面の土壌の浅い箇所や岩角地、外輪に沿う外側の風衝地にも同様にたくさん林があった。尾根(Co300付近)から、ツツジ科の仲間や外輪山内側を彩る種が出現してきた。実に楽しみ多いルートだった。

外輪山内部の地這性や低木状の針葉樹を見定めるのは次の機会にはなったが、恵山に自生する針葉樹類は、石塚和雄(1951)など既存のいくつかの記載を拾うと、ハイネズ・リシリビャクシン・ヒメコマツ・ハイマツが報告されている。はたして現在のその有無は?その密度は? 何れ再訪したいと思ってる。


八幡川の右岸にあるコースの登山口(Co160)

登山口標識・駐車スペース・巨大スリットダム(Co160)
が並ぶ。下流はさらなる追加工事が延々と直列して

サラサドウダン林を過ぎて尾根に出ると
早くもガンコウラン・イソツツジなどの
火口原植生が出現してきた

海向山側の地図上の岩記号の箇所に
自生するヒメコマツ林

尾根を外輪山へ進むと出てくるコイワカガミ、
低木のサラサドウダン、コメツツジも見える

外輪山から火口原を鳥瞰する
左の白帯の工作物は火山礫の流れを誘導する
コンクリート工作物

針葉樹のハイネズと矮小低木のミネズオウ

火山礫を誘導する工作物
火山礫の氾濫を防止するものであろうけれど
火山礫の氾濫原が植生を維持しているのも確かで
工作物は、ササ原への遷移を早めることになる

強風に流れる硫化水素ガス
このガスは、付近の土壌のpHを低下させる。海霧の発生頻度
の高い恵山は、硫化水素ガスが霧に捕捉されて土壌に付加さ
れる作用が高いと考えられる。
高山帯においての最も厳しい環境に生育するとされる風衝の
地矮性低木ミネズオウが、恵山にマット状に高密度で生育し
ている土壌はpH2.7の測定記録もある

ミネズオウ
高山帯の最も厳しい環境(風衝・低温・乾燥・強光)に生える種


ハイマツにつきもののコケモモ


恵山の頂から西方
右側が大きなガスの噴気孔群、左は海峡側

恵山の山頂標識:618.07m
三等三角点<基準点名・恵山、標高617.62m>
<三角点標高は近年改変された>