2018年4月22日日曜日

登山時報の世界へ 山の自然学 高山植物学 山を科学する 小泉武栄

袴腰岳へ上った。登山時報の世界へ入門できた。
...
小泉武栄の本は『山の自然学』以来、「登山時報」に連載されていた「不思議を発見する山歩き」<2003年2月(1回)~2008年11月(69回) >を毎月楽しみに読んでいたのですが、この連載は終了してしまいました。同時報はその後もなりゆきで2018年5月の今も個人購読を継続しています。個人購読年間¥4.560 団体購読であれば¥3.720です。

以下<・mokuの山あるきより>
『高山植物学』が発刊され、その何章かを小泉武栄が分担執筆されておりました。そんなときに新たな本が刊行されたと聞いたので、「登山時報」掲載分を纏めたのかなと思っていたところが、本書は、全く別な書き下ろしで、吃驚しました。

タイトルからみて、高山植物の案内書みたいに思えますが、とんでもない。これまでの山の自然についての解説という流れのうえにたつ、高山植物概論で、山を科学する本の最新版です。

日本の山の特異性と美しさを、地形・地質・植物の三要素から明らかにしたうえで、本の主題「高山植物」に焦点をあて、いろいろな要素のつながりを考える。僕らの好奇心を刺激させ、山の見方を教えてくれます。ただ歩くだけでない、登山の楽しみを呼び起こしてくれる一冊です。

そうしてなによりも、簡潔にして明解な文章がすばらしい。先の「高山植物学」は著者も30名と多く大冊だが、著者のように分かりやすく書かれた文章は少ない。というより僕には著者の書かれた項目が<素人には>素直に頭にはいってくる(そういう方も僅かにあり)ものでした。

例えば、「高山植物の生活環境」という項目では、先の本が数十頁をかけて解説しているところを、新書版4頁で概観してしまう素晴らしさ。全編にわたって、そのように難しい事柄を平易に説明している文章が続きます。新書版だからザックに入れていってもたいしたことはない。『山の自然学』とあわせて、山に持っていって役に立つ一冊といえましょう。

<目次>
 第1章 世界の中の日本の山/
 第2章 高山植物の分布と生活/
 第3章 日本の高山植物の起源/
 第4章 ヨーロッパアルプスにはなぜハイマツ帯がないのか/
 第5章 高山の地質・地形と植物群落/
 第6章 岩塊斜面はいつできたのか/
 第7章 地質の成り立ちとプレートテクトニクス/
 第8章 山の成り立ちと山地の地形/
 第9章 氷河時代とその影響/
 第10章 火山と火山活動がつくり出す植物群落/
 第11章 特異な植生分布

・小泉武栄:日本の山と高山植物、平凡社新書485、2009.9.15・小泉武栄:山の自然学、岩波新書、1998.1.20
。。。。。。。。。。。。。
以下 takeei @ ウィキ より:小泉武栄の「不思議を発見する山歩き」バックナンバー

不思議を発見する山歩き1:爆裂火口に生きる植物たち,富士山・宝永火口を訪ねる.登山時報2003(2): 12-13
不思議を発見する山歩き2:特異な森林限界のせめぎ合い,富士山の天地境を歩く.登山時報2003(3): 16-17
不思議を発見する山歩き3:植生の違いが示す噴火活動の推移,天明の大噴火と浅間山.登山時報2003(4): 10-11
不思議を発見する山歩き4:縞枯れが起きる場所に秘密あり,北八ヶ岳・縞枯山.登山時報2003(5): 16-17
不思議を発見する山歩き5:岩塊斜面に生じた縞枯れとトウヒ林,大峰山系・八剣山.登山時報2003(6): 16-17
不思議を発見する山歩き6:風食地に飛び降りてくる高山植物,飯豊山地.登山時報2003(7): 14-15
不思議を発見する山歩き7:剣岳はなぜあれほど鋭いのか,北アルプス.登山時報2003(8): 16-17
不思議を発見する山歩き8:太平洋の誕生と低下した森林限界,早池峰山.登山時報2003(9): 12-13
不思議を発見する山歩き9:噴火の歴史を反映した植生分布,鳥海山.登山時報2003(10): 14-15
不思議を発見する山歩き10:拡大する森と礫地に咲く花々,秋田駒ケ岳.登山時報2003(11): 24-25
不思議を発見する山歩き11:火山?コマクサの大群落を生む火山岩,蓮華岳.登山時報2003(12): 20-21
不思議を発見する山歩き12:侵食ではなく断層.舟窪のできる秘密,雪倉岳.登山時報2004(1): 18-19
不思議を発見する山歩き13:2万年前と6万年前の氷河地形,木曽駒ヶ岳.登山時報2004(2): 24-25
不思議を発見する山歩き14:氷期につくられた大きな岩の斜面,木曽駒ヶ岳その2.登山時報2004(3): 24-25
不思議を発見する山歩き15:険しい稜線はどのようにできたか,穂高岳.登山時報2004(4): 18-19
不思議を発見する山歩き16:なだらかな斜面に波打つ森林限界,蝶ヶ岳.登山時報2004(5): 16-17
不思議を発見する山歩き17:なぜ「原」のままなのか池塘や縞模様のわけは?,尾瀬ヶ原.登山時報2004(6): 20-21
不思議を発見する山歩き18:尾瀬のおいたち高層湿原と対馬海流,尾瀬ヶ原 その2.登山時報2004(7): 18-19
不思議を発見する山歩き19:いくつもの条件でやっと成立する自然,至仏山.登山時報2004(8): 16-17
不思議を発見する山歩き20:天を衝く岩峰とその生成の秘密,大崩山.登山時報2004(9): 24-25
不思議を発見する山歩き21:直立した地層がつくる双耳峰,傾山.登山時報2004(10): 16-17
不思議を発見する山歩き22:御庭から大沢崩れまでを歩く,富士山 その3.登山時報2004(11): 18-19
不思議を発見する山歩き23:下流の地形や植生で上流の地質を読む,安曇野の扇状地.登山時報2004(12): 16-17
不思議を発見する山歩き24:低地に湿原がある不思議,葦毛湿原.登山時報2005(1): 10-11
不思議を発見する山歩き25:小金井・国分寺を歩く,武蔵野台地その1.登山時報2005(2): 16-17
不思議を発見する山歩き26:台地は2段階で形成された,武蔵野台地その2.登山時報2005(3): 20-21
不思議を発見する山歩き27:地下水が減って台地が洪水に,武蔵野台地その3.登山時報2005(4): 10-11
不思議を発見する山歩き28:武蔵野台地その4,地質の断面から読めること.登山時報2005(5): 18-19
不思議を発見する山歩き29:大雪渓を登って氷河地形を見る,白馬岳 その1.登山時報2005(6): 18-19
不思議を発見する山歩き30:氷河の跡と横にずれた「離れ山」,白馬岳その2.登山時報2005(7): 26-17
不思議を発見する山歩き31:地質が決める地形と植生,白馬岳 その3.登山時報2005(8): 20-21
不思議を発見する山歩き32:流紋岩,泥岩,砂岩や頁岩を見分ける,白馬岳 その4.登山時報2005(9): 16-17
不思議を発見する山歩き33:手取層と巨大崩壊,白山 その1.登山時報2005(10): 18-19
不思議を発見する山歩き34:池をめぐって植生を観察する,白山 その2.登山時報2005(11): 16-17
不思議を発見する山歩き35:溶岩流をおおう湿性草原,雲の平.登山時報2005(12): 16-17
不思議を発見する山歩き36:祖父岳山頂で花崗岩を発見,雲の平 その2.登山時報2006(1): 20-21
不思議を発見する山歩き37:四国を代表するかんらん岩の秀峰,東赤石山.登山時報2006(2): 20-21
不思議を発見する山歩き38:礫岩がつくる岩峰,岩殿山.登山時報2006(3): 22-23
不思議を発見する山歩き39:峡谷はなぜできたか,猿橋.登山時報2006(5): 20-21
不思議を発見する山歩き40:槍ヶ岳の穂先はなぜ尖っているのか,槍ヶ岳.登山時報2006(6): 20-21
不思議を発見する山歩き41:溶岩台地上に発達した高層湿原,苗場山.登山時報2006(7): 20-21
不思議を発見する山歩き42:強風がもたらした高山植物,金北山・妙見山.登山時報2006(8): 20-21
不思議を発見する山歩き43:回復しつつある荒原植生,浅間山.登山時報2006(9): 22-23
不思議を発見する山歩き44:森林植生の見本園,小菅村から大菩薩峠へ.登山時報2006(10): 22-23
不思議を発見する山歩き45:植被が乏しい理由,北アルプス薬師岳.登山時報2006(11): 22-23
不思議を発見する山歩き46:復活したキタゴヨウ林,安達太良山1.登山時報2006(12): 22-23
不思議を発見する山歩き47:生々しい噴火の影響,安達太良山2.登山時報2007(1): 22-23
不思議を発見する山歩き48:グリーンタフの不思議な丘,比企丘陵・二ノ宮山.登山時報2007(2): 22-23
不思議を発見する山歩き49:河床に生じた凹凸の謎,鹿島古墳群と荒川の河床.登山時報2007(3): 22-23
不思議を発見する山歩き50:古生代末の生物大絶滅の痕跡を探る,犬山のチャート.登山時報2007(4): 22-23
不思議を発見する山歩き51:日本最古の岩と最大甌穴,飛水峡.登山時報2007(5): 22-23
不思議を発見する山歩き52:房総丘陵と小櫃川 礫のない箱型の川.登山時報 2007(6): 22-23
不思議を発見する山歩き53:房総丘陵・清澄山,ヒメコマツはなぜ存続したのか.登山時報 2007(7): 22-23
不思議を発見する山歩き54:飯縄山,ブナ林を欠く頑強な山.登山時報 2007(8): 22-23
不思議を発見する山歩き55:磐梯山,大崩壊の後の植生回復.登山時報 2007(9): 22-23
不思議を発見する山歩き56:立山・弥陀ヶ原,タテヤマスギの不思議な森.登山時報,2007(10): 22-23
不思議を発見する山歩き57.登山時報,2007(11): 22-23
不思議を発見する山歩き58.黒斑山1、ロックガーデンを見る楽しさ、登山時報、2007年12月号、22-23
不思議を発見する山歩き59:黒斑山2,間近にみる浅間山の偉容.登山時報2008(1): 22-23
不思議を発見する山歩き60:桜島1,荒々しい火山の地形.登山時報2008(2): 22-23
不思議を発見する山歩き61:桜島2,溶岩の噴出時期によって異なる植物群落.登山時報 2008(3): 22-23
不思議を発見する山歩き62:渥美半島のシデコブシ,成因のまったく異なる生育環境.登山時報 2008(4): 22-23
不思議を発見する山歩き63:御嶽山(1),遷移の途中の植物群落.登山時報 2008(5): 22-23
不思議を発見する山歩き64:御嶽山(2),噴火の影響を受けた植物群落.登山時報 2008(6): 22-23
不思議を発見する山歩き65:御嶽山(3).登山時報 2008(7): 22-23
不思議を発見する山歩き66:御嶽山(4).登山時報 2008(8): 22-23
不思議を発見する山歩き67:霧島山(1).登山時報 2008(9): 22-23
不思議を発見する山歩き68:霧島山(2).登山時報 2008(10): 22-23
不思議を発見する山歩き69:霧島山(3).登山時報 2008(11): 22-23


          

2017年7月21日金曜日

この身北の原野に朽ちるとも 依田勉三

 この身北の原野に朽ちるとも―十勝野開拓の祖・依田勉三物語 単行本 – 2012/12 福永 慈二著・単行本: 613ページ・出版社: 日本文学館 ・ISBN-10: 4776533391

  依田 勉三(よだ べんぞう、1853年6月21日 - 1925年12月12日)は開拓者。北海道開墾を目的として結成された「晩成社」を率いた。
   依田勉三の本はいくつかある。参考文献をしめし、歴史事実に関して裏付けのあるストーリーになっている。 

 物語性があり作品としても素晴らしい。高等教育をうけた、明治の依田勉三のような人物が現在の北海道の農業従事者に求めたい。


 帯広のトンドン、六花亭のマルセイバタサンド・ひとつ鍋など、晩成社とかかわりある事柄も知ることが出来た。
主な本:呼ぶ声―依田勉三の生涯 (上・下巻) (潮文(230))1984/10 松山 善三、依田勉三と晩成社 単行本 – 2012/3/10井上 壽 (著), 加藤 公夫 (編集)
 

2017年5月3日水曜日

山ほほ笑む 酒谷山

2017/5/3 酒谷山
ルート図
*農道終点に駐車(車寄せのspaceほぼ2台分あり)。牧場を森林の方向へほぼ直進する。

*◎の箇所にトドマツ孤立木あり。ここのササを押し分けると作業路跡(北電作業路跡?)が見つかる。

→印の作業路に沿って送電線下の酒谷山直下まで地形をうねりながら上る。

*途中、標高400mを越えるあたりで作業路を横断する林野庁管理の境界管理歩道がある。

*頂上直下が草地の鉄塔広場(格好の山座同定の広場)。

*鉄塔下草地と山頂への傾斜変換のコンター430に沿って良く管理された歩道(奥津内川と酒屋川を結ぶ)がある。


1↓ 山頂直下の送電線鉄塔敷地内(下図の草地)から見る酒谷山(標高差ほぼ20m)。
草地と笹生地の間に良く管理された歩道がきれいに整備されていた(奥津内川から酒谷川へ尾根を横断する歩道であろう)。
国縫層の角礫岩が発達する地域で、地形にもそんな様子がうかがえた。


2↓ 酒谷山の山頂表示板。4本立ちのエゾイタヤに括りつけられていた。
書体の世界は分からないが、宮沢賢治の童話の世界を思い浮かぶ、親しみ持てる書体だった。
山頂部は繰り返し伐採されたと思われ、ブナは全く見当たらなかった。


 
3↓ 山頂の二等三角点、点名:酒谷山。 刈り払われ分かりやすくなっていた山頂にしっかりした標石が埋設してあった。
このような藪山も登る人が多くなってきた様子で、鉄塔下の草地からの先に、尾根に沿ってチシマザサの踏み分け道が見つかった。


4↓ 山頂の南尾根側:頂き標識を括りつけた数本の株立ちはエゾイタヤ、周りはアブラホのほか殆どシナノキが多かった。下層はキシマザサ。




 
5↓ 山頂の東尾根側:シナノキ群の奥にコブシ咲く。




 
6↓ 山頂の北側尾根:ダケカンバが木立を作っていた(直下は鉄塔広場)。古い二次林と思われた。



 
7↓ コンター430に沿って奥津内川と酒屋川を結ぶ良く管理された歩道があった。その歩道の肥沃斜面に立つシナノキに着生していたオシャクジデンダ(冬緑性の樹上シダで、夏に枯れ針葉を展開する。葉は硬くない草質。オシャクジは、乾燥時の形が杓子を連想することからと思っていたが、木曽の社貢寺からだという。)




 
8↓ 二等三角点らしくその山座同定を思うままにかなりの時を楽しめた。
左から冷水岳、白水岳、臼別頭、ユーラップ岳、太櫓岳。 いわゆる熊石アルプス。
手前には雪解け進み残雪がまだらな岩子岳、ペンケ岳。



 
9↓ 後志と渡島・桧山を界する狩場山。右へカスペ岳、メップ岳、カニカン岳、点名:利別Ⅱ、長万部岳。


 
10↓ 左から点名:利別Ⅱ、カニカン岳、長万部岳、二股山、離れて白いテーブルは黒松内岳。 まだ浅き緑の八雲平野は春耕の繁忙期。




 
11↓ 長万部岳、二股山、黒松内岳。ダケカンバの前にブナの冬芽が大きく膨らんでいるのが分かる。新緑はすぐそこにある。冬芽のふくらみ状態から花芽のふくらみとみて間違いないであろう。ブナは種子をたくさん着ける豊作の年になりそうだ。




 
12↓ 後志と桧山を界する茂多岬から狩場~利別Ⅱ。手前の緑なす平野は八雲平野。




 
13↓ 駒ヶ岳。右端の山は?濁川カルデラの外輪にある毛無山?。



 
14↓ 右端が狗神岳。




 
15↓ スタートの牧場から展望する噴火湾越しに目国内岳~尻別岳の峰々。草地の左側に農道終点が見える。




 
16↓ 牧場を介して農道終点の反対側にトドマツ孤立木あり、ここのササを押し分けると作業路跡(北電作業路跡?)が見つかる。





 
17↓ 牧場から前方の疎林の中に作業道が現れた。送電線工事のときに作られた道なのであろうか。維持修理等の手入れもされていないようだが道の傷みは少なかった。傷みの少ない路面、崩落個所もほとんど無い。穏やかな地形が遠因と思われた(国縫層角礫岩)。 




 
18↓ シュリの針葉。開花時の赤みはすでに薄れて新たな生活のステージを迎えていた。




・どちらを向いても山ほほ笑む:山笑うは春がもっと進んだころであろうか。とすれが「山ほほ笑む」がよろしいか?
山笑うは「春山淡冶にして笑うが如く、夏山蒼翠にして滴るが如く、秋山明浄にして粧うが如く、冬山惨淡として眠るが如く」に拠るとされている。