2007年1月3日水曜日

檜倉岳

↑’07.01.03檜倉 ひくらだけ:631.5m(三角点・中二股631.47m)
サワグルミの狭い沢とブナ林のヤセ尾根と定高の幅広い尾根を歩く

 【三角点: 点名:中二股 等級:三等三角点 地形図:函館-大千軒岳 世界測地系緯度41°32′26″.1197 経度140°12′0″.8427 直角座標系:11系:(X)-273183.235m、(Y)-4152.253m 所在地:松前郡福島町 点の記図なし】
 【2007.01.03/sa、ha、ka、um氏ら5名→ 函館5:00→千軒→澄川林道と知内川支線分岐に車デポ6:50→独立標高点145m7:30→送電線沿い(沢沿い歩道を遡行)→NHKミニサテライト局9:00(三角点名△前二股381.27m)→稜線上の搬出路利用→標高点531mの繭型ピークのコル10:20→檜倉岳11:00→往路→車デポ地点2:00【檜倉岳は福島川支流のノソベ川源流そして知内川支流の出戸二股川と中二股川源流部に位置する】

 【コースの地質は、更新世段丘の林道上を→小沢の入口から中新世中期の八雲層に入り→源頭部で中新世前期の大安在川層・中新世中期の国縫層と変化し→前二股三角点で中新世中期国縫階の火山砕屑物に至る。→国縫階の地質が定高稜を檜倉岳直下まで続き、山頂は国縫層。分水嶺の松前層群に向かって中新世前期の吉岡層・福山層と標高を上げていく。コースから離れるが、盟主大千軒岳を含む白神岬までの分水嶺は石炭紀-ジュラ紀相当の松前層群になる




檜倉岳は、松前半島(中山峠から西南部)の盟主大千軒岳1072mから白神岬に至る分水嶺上の袴腰岳815mと百軒岳772mの中間から東方の福島峠に分岐した稜線上にある。つまり知内川上流の国有林と、福島川上流の道有林を分かつ分水嶺上にある。檜倉は河川名と福島高校辺りの地名でもある。山名は福島町の檜倉に由来するが、三角点名は知内川の支流中二股川に由来する。山容は福島町市街から良く知られ、山頂へのアプローチは知内川側から遡行されてきた反映であろうか。


  日本山学会による分水嶺踏査時の袴腰岳へのアプローチルートを辿る知内川千軒集落から入山することにした。函館(附属中学前のコンビニ)を5時に出た。積雪が無くて、2時間の予定より悠に早く千軒集落に到着した。豪雪地帯の千軒集落も今年はかなりの寡雪で、千軒アメダスのデータを見ると昨年1月3日は99cm、今年の同日で14cm( http://www.data.kishou.go.jp/etrn/index.html )だった。除雪終点からさらに積雪を押しのけながら、やや強引に車を840m進め、「大千軒岳登山口まで4.4km」の看板が立ててある澄川林道と知内川林道分岐駐車場(独立標高点141m)まで車を入れた。4名がアルミワカン、U氏がスノーシュー、それぞれ身支度を終え、所定より早い、写真のとおり夜明け前の出発になった。林道歩きは、ワカンを必要としないほどの積雪だ。

① 澄川林道と知内川林道分岐



・広い段丘 上の一直線の林道を過ぎて、道が大きくカーブする国有林入り口付近で茜色に輝く前千軒岳が見えてきた。如何にも神々しい正月の日の出だ。空の色はピカッパレの登山日よりを予想させた。独立標高点145mで林道を離れた。

② 夜明けの大千軒山塊



・1/25000地形図上の歩道に沿って小沢を進むことになる。全体に二次林域だが、沢沿いにサワグルミ林、斜面からヤセ尾根まで広くブナ林が発達する。森の中は、伐採による二次林だけれど、林の様子は原生林の組成種と同質だからか、何故だか心休まる思いがした。沢を進むとはいっても、送電線の管理道の道形が認められて、とても足場が良い。苔生した岩石が転がる小川の流れも、確かに心地よい。

④ 小沢に発達するサワグルミの二次林

⑤ サワグルミの落下芽鱗 (1月中に全ての芽鱗が落ちる:裸芽グループに分類される)



ヤセ尾根にかかる。35度を優に超えるだろう傾斜だ。膝を持ち上げながら進むのも好きだ。ヤセ尾根歩きは、いつものことだが、精神が解放される思いがする。なぜだか知らない。ベテラン揃いのグループに、正月山行の思いも加わっておおいに満足だ。モチノキ科のヒメモチが2つ赤い実を付けていた。雪上のヒメモチの濃緑に光る葉が新鮮だ。ますます心が弾み、ワカンも心地よく効いて満足の登高だ。ブナの木も新年の太陽の恵みを静かに受けている。心なしか、ブナの樹幹に生きる地衣類も暖かに見えた。「生きとし生けるもの…」そんな言葉を思い描きながら急登のヤセ尾根の森に居ることに感謝していた。左にトドマツ植林(風倒被害で大きなギャップ)、右にブナ二次林の吊り尾根を超えると三角点前二股381.27mに出た。

③ 神々しい光に暖かい正月のブナ樹幹



 

・NHKミニサテライト局381mから、展望を指呼しながらも定高の幅広い尾根に付けられた林道と搬出路を繋いでどんどん進む。周囲の森林はブナ帯上部にあり、もちろんブナ林の領域だが、右側の国有林も左側の道有林も伐採が稜線まで及んでいた。搬出路が終わるところで繭型地形のピーク531mに出た。いよいよ寡雪の山歩きの辛さが始まる。チシマザサが寝ていない。いわゆる地ダケワラを行くのだ。日帰り冬山完全装備の重い身で、ワカンが頻繁にぬかる。先を行くH氏のラッセルする音のリズムに合わせて進もうとするが、ワカンが思わずヌカルたびに、そのリズムに慌てて追いつくはめになる。しばらくはメイッパイ頑張る苦行だ。檜倉岳直下から40度の斜面に入る。ヒマラヤンのH氏に離されまいと、ヌカル斜面を地ダケを縫いながらを全身全霊両手両脚で彼を追った。ほどなく頂上だったが身体はメイッパイだった。展望の様子は同行のS氏http://sakag.web.infoseek.co.jp/hikura.htm 、H氏http://kariba.txt-nifty.com/kariba/ に詳しい。


⑥ 定高尾根に残るブナの古木を背景に大千軒岳


⑦ 繭型尾根(p531m)の東方で遭遇した寝ないチシマザサ:写真から高さが分かって→千軒地域の山人が自慢する「タケノコの太さ」の産地出戸二股沢の谷頭だ。


⑧ 山頂の反射板が見える。(白銀に輝く前千軒


 ↓登行コース
 


⑨ 山頂にて:後は袴腰岳 Hasegaw・Umekaw・Skagut・Kataok(撮影:TaoことTakahash.