2011年6月4日土曜日

恵山(ヒメコマツ)

渡島半島の太平洋側におけるヒメコマツの分布は、落部のヤセ尾根に高密度で自生し、渡島・胆振地方の北限にもなっている。日本海側は、点々と北上する情報があっても、北限にあたる旧大成町宮野峠から西方にかなり歩かなければならないから、残念ながら未だ訪ねることはしていない。何れ猛者連と連れだって達成したいと思っている。

北海道におけるヒメコマツの地理的分布は、北限とされる十勝の自生地が東大雪博物館研究報告「ピシカチナイ山の1尾根における北限のキタゴヨウ林分の現況について」(14):1-14 1992/3/に詳しい。また、天然記念物に指定された ・鶉川と・幌満 はよく知られているところである。旧南茅部町の町の木が「キタゴヨウ」に指定されているが、その理由も知りたい。

恵山への登山ルートは①恵山 ②恵山岬 ③八幡川の三か所が整備されている。この度は長いルートとされる八幡川から外輪山~恵山の頂に立ったが、「外輪山の外斜面を見ずして恵山は語らず」の感を強くしたのはヒメコマツの林をそこここに見たからであった。植林地やミズナラを主とした雑木林、ミズナラ・サラサドウダン群落、サラサドウダン林と続く林を登山路に沿って進むと、ほどなく標高点461mへの西北西尾根に立つことになる。この尾根から八幡川源流域が一気に目に入ってくる。源流部の地形図の崖記号のあるところはことごとくヒメコマツの林があった。急斜面の土壌の浅い箇所や岩角地、外輪に沿う外側の風衝地にも同様にたくさん林があった。尾根(Co300付近)から、ツツジ科の仲間や外輪山内側を彩る種が出現してきた。実に楽しみ多いルートだった。

外輪山内部の地這性や低木状の針葉樹を見定めるのは次の機会にはなったが、恵山に自生する針葉樹類は、石塚和雄(1951)など既存のいくつかの記載を拾うと、ハイネズ・リシリビャクシン・ヒメコマツ・ハイマツが報告されている。はたして現在のその有無は?その密度は? 何れ再訪したいと思ってる。


八幡川の右岸にあるコースの登山口(Co160)

登山口標識・駐車スペース・巨大スリットダム(Co160)
が並ぶ。下流はさらなる追加工事が延々と直列して

サラサドウダン林を過ぎて尾根に出ると
早くもガンコウラン・イソツツジなどの
火口原植生が出現してきた

海向山側の地図上の岩記号の箇所に
自生するヒメコマツ林

尾根を外輪山へ進むと出てくるコイワカガミ、
低木のサラサドウダン、コメツツジも見える

外輪山から火口原を鳥瞰する
左の白帯の工作物は火山礫の流れを誘導する
コンクリート工作物

針葉樹のハイネズと矮小低木のミネズオウ

火山礫を誘導する工作物
火山礫の氾濫を防止するものであろうけれど
火山礫の氾濫原が植生を維持しているのも確かで
工作物は、ササ原への遷移を早めることになる

強風に流れる硫化水素ガス
このガスは、付近の土壌のpHを低下させる。海霧の発生頻度
の高い恵山は、硫化水素ガスが霧に捕捉されて土壌に付加さ
れる作用が高いと考えられる。
高山帯においての最も厳しい環境に生育するとされる風衝の
地矮性低木ミネズオウが、恵山にマット状に高密度で生育し
ている土壌はpH2.7の測定記録もある

ミネズオウ
高山帯の最も厳しい環境(風衝・低温・乾燥・強光)に生える種


ハイマツにつきもののコケモモ


恵山の頂から西方
右側が大きなガスの噴気孔群、左は海峡側

恵山の山頂標識:618.07m
三等三角点<基準点名・恵山、標高617.62m>
<三角点標高は近年改変された>